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Money Theater

アングラ映画の紹介・解説と日常の憂鬱

『闇金ウシジマくんTHE・FINAL』 社会問題Pickup

現実にある、社会問題や犯罪をリアルに描写した「闇金ウシジマくん」。

本作でも、社会の闇を体現したようなキャラクター達が登場し、ウシジマとしのぎを削り合う。

 

今回は、そんな社会の闇からの “刺客”達をもとに、現代日本の問題に照らし合わせて、紹介・解説していく。

 

 

 

 

 

“刺客”から見る現代社会の闇

 

①誠愛の家 貧困ビジネスの巣窟 ~

【 劇中 】

「敷金礼金なしで、1日900円で住める場所があるよ。」

「仕事も斡旋するよ!」

鰐戸三兄弟が経営する低額宿泊施設“誠愛の家(ラブハウス)”は、そんな甘い誘惑で社会的弱者を集める、所謂「貧困ビジネス」である。

「こんな所で寝ていたら凍え死んじゃうよ!あったかい布団で寝られるよ!」

経済的に困窮した者からすると、とても魅惑的な謳い文句だろう。だが、連れて来られた人達には、悪夢のような凄惨な日々が待っていた。

 

貧困ビジネスとは?

貧困ビジネスとは、経済的に困窮した社会的弱者をターゲットに利益を生み出すビジネスモデルで、ホームレス支援や貧困問題に取り組むNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』事務局長、湯浅誠によって提唱された言葉である。

例としては、「無料低額宿泊所」、「労働者派遣」、「ゼロゼロ物件」、一部の「ネットカフェ」、「消費者金融及び闇金融」などが挙げられる。

その殆どにおいて言える事だが、顧客である貧困層の救済という社会貢献を掲げながらも結局は貧困を固定化し、利益をとる企業側のみに都合の良いビジネスモデルが整備されている。

 

“誠愛の家(ラブハウス)”は、ゼロゼロ物件、タコ部屋労働、ギャンブル、風俗など、あらゆる貧困ビジネスの要素を詰め込んで入居者を搾取していた。

下記では、その一部について詳細を解説する。

 

 

 

ゼロゼロ物件

路上で震えながら朝を待つ竹本を見つけた鰐戸三兄弟の次男・次郎(YOUNG DAIS)は、「敷金礼金なしで住める低額物件」として“誠愛の家”を紹介し、場所まで案内する。

しかし、施設に着いて突然「入居時に家賃数ヵ月分を一括請求する」と、次郎は新たな条件を持ち出してきた。

当然ホームレスの竹本には払えない値段になってしまい、結局は借金をして入居する事になる。

 

【 解説 】

次郎のセールスからはゼロゼロ物件を彷彿した。

このような物件は「敷金礼金なし」を宣言しながらも、実際には「入会金」、「仲介手数料」、「保証金」など、あらゆる名目で金銭を回収する為、単純な格安物件ではない。

また、“囲い屋”と呼ばれる悪質な無料低額宿泊施設の存在もある。入居者に生活保護を申請させ、長期に渡って生活保護費を掠め取る形態の貧困ビジネスである。

日本の公的賃貸住宅の数はヨーロッパに比べて少なく、一般の民間賃貸住宅の利用が難しい低所得の非正規労働者には厳しい環境である。

 

 

タコ部屋労働

入居した竹本は、六畳ほどの小汚い和室で他の入居者三名と共同生活する事になった。映画では描写されなかったが、原作は汚物が飛び散ったトイレなど、不衛生さの表現が強い。

無断外泊は認められないようで、殆ど軟禁状態である。また、各部屋の者同士で責任を連帯し、時にはお互いを見張り合う、江戸時代の「五人組」に似た制度が使われているようだ。

入居前の謳い文句にあった「仕事の斡旋」に関しては、低賃金のキツイ肉体労働が主であり、時には犯罪行為も強制された。食事は提供されるが非常に粗末なもので、消費期限が年単位で過ぎたレトルトのカレーとご飯を“冷やしカレー”と呼んで、温めもせずにそのまま出していた。

少しでも休んだ者、逃げようとした者は厳しく罰せられ、入居者達は凶暴な鰐戸三兄弟の三男・三蔵の虐待に怯えていた。

 

【 解説 】

主に戦前の北海道で行われてきた、非人道的な肉体労働が由来。労働者を“タコ”、監禁部屋を“タコ部屋”と呼ぶ。似たケースに九州の納屋制度がある。

暴力行為を伴った長期間の強制労働に加え、粗末な食事や不衛生な生活といった劣悪環境によって身体を壊す者も多く、理不尽に大勢の命が失われた。

さらに、逃げ出す者が出ないよう、捕えられた脱走者には見せしめとして容赦ない制裁が行われたという。

現代の日本では、労働基準法第5条「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」と定め、タコ部屋労働を禁止している。

しかし、現代でも非合法で行われているという話もあり、実態は定かではない。

 

 

 

 

 

②都陰法律事務所 ~ 詐欺的行為でカネを貪る悪徳弁護士 ~

 

【 劇中 】

“TVCMや中吊り広告を見ると、過払い請求を勧める法律事務所に溢れている”

映画冒頭で、カウカウファイナンスの債務者(六角精児)は、そのように愚痴っていた。本作では、そんな弁護士界隈からも“刺客”が参戦する。過払い請求を利用して大金を稼ぐ、都陰弁護士(八嶋智人)である。

彼の登場には、その道のプロの優秀さを実感させられる。実際ウシジマは、前半では都陰弁護士にやられ放題だった。

しかし、彼の経営する法律事務所は、相談者の無知に付け込んで様々な違法行為を行い、カネを貪っていた。

 

【 解説 】

田舎暮らしの為、中吊り広告にはピンと来ないが、一時期突然に増えた法律相談所のTVCMになら、私も違和感を覚えた記憶がある。

調べてみると、2006年から2010年にかけて、貸金業法という貸金市場のルールが大きく改正されたことが発端のようだ。

この法改正によってグレーゾーン金利が撤廃され、これまで正当な利息として合法化されてきた「みなし弁済」という利息制限法を超える金利が認められなくなった。つまり、過去に金融業者に支払ってきたグレーゾーン金利部分を取り戻せるようになったのだ。所謂「過払い請求」である。

過払い請求は債務者にとって救いのような話だが、弁護士にとっては比較簡単に稼げるビジネスである為、法律事務所が主体となって推し進め、一時期の過払い金ラッシュをつくった。これが街に溢れる法律事務所の広告の正体である。

最近では、「過払い請求」の単語を目にする機会は減ったように思えるが(都心部の事はよく知らないが)、今でも過払い請求は多く行われているようである。現在、業界全体の利息返還額は6兆円を超え、消費者金融市場は順調に縮小化している。

しかし、都陰弁護士の描写は、そんな流れを利用し、私腹を肥やすハイエナ弁護士の存在を暗示しているようだった。

また債務者(六角精児)はこんな事を語った。“消費者金融の審査が厳しくなって、合法的な場でカネを借りるのが難しい人が増える。闇金の復活だ”

気になって検索してみると、融資保証詐欺という、古いタイプを使う闇金業者が復活しているとの話があった。

どんなに光を当てても影が出来てしまうのは、世の習わしかも知れない。

 

 

 

 

 

まとめ

作中のような「貧困ビジネス」は、被害者の知識不足に付け込んだケースが多い。

こういった、“学校じゃ教えてくれない”社会知識は自分でしっかり調べ、正しい知識を持っておくべきだと改めて考えさせられる。

『闇金ウシジマくんTHE・FINAL』個人評価

闇金ウシジマくんTHE・FINAL』

公開:2016年10月22日

監督:山口雅俊

原作:真鍋昌平闇金ウシジマくん』(小学館「週刊ビックコミックスピリッツ」連載中)

出演:山田孝之綾野剛永山絢斗真飛聖、間宮祥太郎、YOUNG DAIS、最上もが、真理恵里菜、太賀、狩野見恭兵、湊莉久、天使もえ、マキタスポーツ玉城ティナ、六角精児、モロ師岡安藤政信八嶋智人高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけ

脚本:福間正浩 山口雅俊

主題歌:Superfly「Good-bye」ワーナーミュージック・ジャパン

イメージソング:Superfly「天上天下唯我独尊」ワーナーミュージック・ジャパン

 

 

 

▶あらすじ

映画のメインストーリーは、原作コミック18~20巻収録の「ヤミ金くん」編からであり、主人公・丑嶋馨(山田孝之)に初めてスポットを当てた内容である。

 

丑嶋はアウトローの金融屋「カウカウファイナンス」の社長。オモテの金融機関に見放されたワケありの連中に、「トゴ(10日で5割り)」や「ヒサン(日に3割)」といった違法な高金利でカネを貸し付け、返済が滞る債務者には容赦なく取り立てる。

債務者に一貫して無慈悲な丑嶋であるが、ある日突然カネを借りに現れたのは竹本優希(永山絢斗)という、中学時代の親友であった。

かつて心を許した友との再会によって、丑嶋の語られなかった過去や人間的な部分が明らかになる。

 

さらに、丑嶋に復讐を誓う鰐戸三兄弟(安藤政信/YOUNG DAIS/間宮祥太郎)、過払い請求で闇金を餌食にする都陰弁護士(八嶋智人)、因縁のある女金融・犀原茜(高橋メアリージュン/玉城ティア)といった強力な刺客達が襲い掛かり、丑嶋の右腕・柄崎(やべきょうすけ)、部下の高田(崎本大海)、盟友の戌亥(綾野剛)、心優しい受付嬢・モネ(最上もが)といったカウカウファイナンスのお馴染みの面々に、かつてない苦難が待ち受ける。

 

カネか、仲間か、友情か、丑嶋の出した答えとは?

 

 

 

 

 

▶個人評価

私は本来、旧作レンタル派なのだが、我慢しきれず借りてしまった。

原作漫画で神回だった「ヤミ金くん」編エピソードだったので、元のイメージが強い分がっかりするかも知れないと恐れていたが、結果としては悪くない映画だった。

映画オリジナルのラストシーンも、原作とは少し違った魅せ方でウシジマの葛藤と決断を描写していて、映画版も観て良かったと思えるものだった。

だが、やはり漫画と比べると雰囲気がマイルドになっており、正直物足りない部分もあった。特に竹本優希はウシジマと同等くらいの存在感を、もっと出して欲しかった。あれでは、ただの甘い奴にも取れてしまう。

もっとも、原作のあの重たい空気感は、漫画ならではの表現技法によるところが大きいと思うので、完全再現する事は難しいだろう。だが映画エピソード1に比べて、ダークな世界観が薄くなってきたのも気になるところだ。

とは言え、映画だけを純粋に観れば十分にえげつない内容である。犀原茜の「伝説の死のキス」など、グロテスクで人によっては不愉快なシーンも多いので、観る前には注意が必要かも知れない。

 

ウシジマの人間味が垣間見える面白い内容なので、同シリーズを観てきた人、「闇金ウシジマくん」に関心がある人には是非観てもらいたい。

『早熟のアイオワ (The Poker House)』 紹介と感想

『ラ・ラ・ランド』が話題によく挙がる今日この頃だが、流行にめげずアングラ映画の紹介をしていこう。

 

今回は、『X-MEN:アポカリプス』などで若き日のレイブン・ダークホルム(ミスティーク)役を演じるジェニファー・ローレンスの初主演作、『 早熟のアイオワ(The Poker House) 』について語りたい。

 

1年くらい前に観て大好きになった映画なのだが、語る機会に恵まれなかったのでこの場をお借りする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二大若手女優の原点!

『 早熟のアイオワ (The Poker House) 』

 

公開/ 米:2008年6月20日・ 日:2014年2月22日

監督/ ロリ・ペティ

脚本/ ロリ・ペティ、デヴィット・アラン・グリア

原作/ ロリ・ペティ

出演/ ジェニファー・ローレンスセルマ・ブレアクロエ・グレース・モレッツ、ボキーム・ウッドバイン

音楽/ マイク・ポスト

製作/ マイケル・ドゥベルコ

撮影/ ケン・セング

上映時間/ 93分

製作国/ アメリカ合衆国

 

 

▶あらすじ

1976年、アイオワ州のカウンシルブラフス。

この小さな町で14歳のアグネス(ジェニファー・ローレンス)は幼い2人の妹と“ポーカーハウス”と呼ばれる家で暮らしていた。

夜になると、家にはポーカー賭博や売春目的の男たちがやってくる。

母親のサラ(セルマ・ブレア)は、恋人のデュバル(ボキーム・ウッドバイン)に言われるままに売春を繰り返し、しかも、アグネスにまでも売春を強要する。

劣悪な環境に生きながらも、希望を見出そうともがく姉妹の物語。

シネマトゥデイ参考)

 

 

 

 監督の少女期の実話

ブレイク前のジェニファー・ローレンスロエ・グレース・モレッツが出演しているということで、彼女たちのファンからしたら有名な映画なのではないだろうか。

また、俳優ロリ・ペティが自らの少女期の経験に基づいて監督・脚本を行った、自叙伝的な作品でもあり、なかなかに気になる背景が多い映画だ。

 

しかし脚本としてみると、映画的な演出や盛り上がりに欠け、ゆっくりと漂うように主人公たちの人生が進行している印象だ。

なので、ストーリー自体は大味な気もするが、不思議と中だるみがなく退屈はしない。

それどころか、まるで物語に血の通っているようなリアルさがある。

 

 

 

役者のリアルな演技力

物語に血を与えた重要なポイントは、役者の演技力にあるだろう。

 

特に、と言うか、やはり、ジェニファー・ローレンスが素晴らしい。 

母親の恋人・デュバル(ボキーム・ウッドバイン)に対してみせる純粋な恋心と、母への暴力を憎む、矛盾した気持ち。

「今日のバスケットの試合に勝てば州大会に出られる!」と子供のようにはしゃぐ面。

姉として妹たちを守り、自堕落な母親を軽蔑しながらも家から離れられない、家族の中での顔。様々な表情が観られる。

 

そんな、若干14歳でありながら、生きる為に大人になるしかなかったアグネスの不安定な心境と、その成長を見事に表現している。

ただ、ジェニファー・ローレンスを見ていると「絶対に転落なんてしないだろう、まず大丈夫だ」といった天才感も微かに感じる。

 

“準決勝がある 人生で一番大切な試合よ”

“甘くて優しいキス ママを殴る男とは思えない 私を愛しているからこんな優しいキスを・・・”

“頭にあるのは今日 そして今夜のことだけ 今夜はすてきな夜だ”

 

 

 

アグネスの一番下の妹、キャミ―役を演じるクロエ・グレース・モレッツは、観ていて思わず泣きそうになる。

家に居たくなくて友達の家に寝泊まりし、その家の父親に朝食に連れて行ってもらう。そんな友達の父に対して「あなたが父親なら良かったのに」と漏らす。

しかし、この父親を含めてこの街の大人たちは自分勝手で、周りの不幸に無関心なのだ。

優しかったり、気が良かったりするが、本当の意味で手を指し伸ばしてはくれない。

時間潰しの為に常連のバーでジュースにさくらんぼを入れながら、そんな大人達を寂しそうに眺めている。悲しそうな表情に胸が締め付けられる。

 

“何で大人は愛していない人に愛してるっていうの?まるで何かをごまかすために言っているみたい(中略)もうジュースはいらない 家に帰りたい”

 

 

 

また、セルマ・ブレア(サラ役)の、3人の娘を持つ母親にも関わらず自堕落に生きる、ビッチで自己中な母親の演技も印象的だ。

毎晩男を家に入れ、娘の前で子供のように癇癪を起し、ドラックを吸う。

そのくせ、分かったようなことを言い、実の娘に対してマウントを取りたがるところなんて最低で最高だ。

 

“みんな好き勝手に私のものを奪っていく 私からね (中略)

なによ また母親をバカにするの? 何でも分かったような顔してるけど実際は何もわかってない バカにしてないわ ごまかしてもムダよ …出掛けたら?”

“いいことを教えてあげる 今朝の客は うまかった だから決心したらママに教えて 体を売るしかないんだから 最初くらい いい男を そろそろ決める時期よ”

 

成績も、バスケット選手としても優秀な将来有望のアグネスに対して、こんなことを平気で言う。

ただ、母親も最初からこうだったわけではなく、そうなってしまった理由がある事が辛いところだ。

 

シンプルなストーリーを、役者の迫真の演技で、ドラマチックに鬼気迫ってくる。

ただ、アグネスの同世代の交友関係が、男友達についてしか描かれなかったのが少し残念だ。

 

 

 

心地いいラストシーン

最後に触れたいポイントは、ラストで三姉妹が車のカッセトテープにのせて“Ain't No Mountain High Enough”歌うシーンだ。

この場面が最高に良い。

これまでの鬱憤をそこで全て晴らすかのように、三姉妹がノリノリで熱唱している。

絶望のどん底から這い上がる、明るい未来を暗示しているようでカタルシスを得られる。

この歌自体も非常に良いものなので、お勧めである。

 

 

 

この世に蔓延る悪を殲滅しろ。それこそお前に与えられた使命だ。『 脳男 』

『 脳男 』

 

公開/ 2013年2月9日

監督/ 瀧本智行

脚本/ 真辺克彦、成島出

原作/ 首藤瓜於「脳男」

制作総指揮/ 城朋子

制作/ 藤本鈴子、由里敬三、藤島ジュリー景子、市川南、藤門浩之、伊藤和明、入江祥雄、

松田陽三、宮本直人

出演/ 生田斗真松雪泰子二階堂ふみ太田莉菜江口洋介染谷将太

音楽/ 今堀恒雄、ガブリエル・ロベルト、suble

主題歌/ キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」

撮影/ 栗田豊通

編集/ 高橋信之

上映時間/ 125分

 

 

 

 

▶概要

生田斗真主演のサスペンス映画。原作の「脳男」(著:首藤瓜於)は第46回江戸川乱歩賞の受賞作品である。また、第2作目の続編「指し手の顔 脳男2(上)(下)」は乱歩賞史上に残る問題作との評価がある。

 

 

▶あらすじ

刑事・茶屋(江口洋介)は連続爆破事件の犯人・緑川(二階堂ふみ)を追い詰めるが、確保できたのは、その場にいた身元不明の青年・鈴木一郎(生田斗真)だけだった。

鈴木は精神鑑定に回され、精神鑑定医・鷲谷真梨子(松雪泰子)により検査を受ける。結果、彼は並外れた知能と肉体を持つが、感情がなく痛みも感じない人物であった。

悲しい宿命を受けた“脳男”を巡る、バイオレンスミステリー。

 

観る人の感性によって感想は異なる為、ご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

▶感想

 

映画の見初めで、まず生田斗真(鈴木一郎役)の演技力に驚いた。 

感情のない表情や機械の音声のような話し方は、彼の端正な顔立ちと相まって、まるで人間に限りなく近いロボットに見えてくる。

そんな、ずっと見ていると不安になってくる不気味さは“脳男・鈴木一郎”の漫画のダークヒーローのような、現実味のない生い立ちにリアリティを与えている。映画のラストで彼が見せる表情の変化には、思わず鳥肌が立つ。

 

生田斗真の役者としての力はこれ程だったのかと、感動せざるを得なかった。

(イケパラとかの、ギャグキャラのイメージがあったのに…)

 

 

また、生田斗真を付け狙う二階堂ふみ緑川紀子役)の存在にも注目したい。

この役は、原作では高い頭脳を持つ中年男性の緑川紀尚が当てはまるが、映画では設定を変えている。

私は小説の方は未読であるので、元の緑川の魅力については分からないが、映画としての脳男においては二階堂ふみの抜擢は素晴らしいと感じた。

 

高い頭脳を持つ、サイコパスの爆弾魔というこれまた漫画のような設定だが、二階堂ふみの演技と“鈴木一郎と対照的な犯罪者”という構造により、こちらも映画を面白くする重要な要素のひとつになっている。

 

特に彼女のギラギラした目は妖しい光を放っており、ひと目で異常性が伝わってくる程である。(彼女の、舞台挨拶やバラエティ番組で見せる柔らかい表情を見ると何故か安心するくらいに演技がキマッている。)

 

 

また、鈴木一郎に人間味がない分、緑川を含めて他の登場人物は感情的で人間臭くなっているのも面白いところである。

激情型の刑事、悲しい過去に囚われた精神科医サイコパスの爆弾魔と彼女を神のように崇める部下…

このように、主要な登場人物は物語のキャラクターらしく個性的に描かれている。

しかし、

犯罪、命の価値、被害者遺族の感情、加害者の人格と更生の可否…

社会的に取り上げられる、重く難しい問題にいくつか触れているため、単なるエンターテイメントではなくシリアスな要素も含み、物語に全体的な締まりがある。

 

特に物語を構成する上で、染谷将太(志村役)の役割は重要である。

個性的な人物が多い中で彼のプロフィールは少なく、他のキャラクターを掘り下げる装置のような意味を持っている。

しかしその分、逆に生々しい存在感があり、現実じみた絶望感を最後に与えた。

 

 

 

 

グロテスクでバイオレンス、情け容赦のない悲劇が連続する映画だが、完成した物語や役者さん達の演技が光った面白い映画だと思う。

 

まだ観ていない方で、もし興味を持って頂ければ是非観てもらいたい。

美しくもがく、羽ばたく虫けら達の物語 『スワロウテイル』 

最近暖かくなり、春の到来を感じる。春は始まりの季節だ。

 

就職の決まった友人たちは、社会への進出を控え、学生生活の余韻を楽しんでいる。

対して、私の進路は大学院への進学である。先日、合格通知を受け、人生の重要な転機となった。

 

大学院に受かったことは感涙の至りだが、この大きな節目を前にして、新しい環境に身を移す事について、もちろん入社する友人たち程ではないだろうが、それでも不安な気持ちは抑えきれない。

 

そこで、今回はそんな、私の未来への不安を発散させてくれた映画の紹介と感想を述べていく。

観る人の感性によって感想は異なる為、ご注意下さい。

 

 

 

スワロウテイル

公開 / 1996年9月14日

監督 / 岩井俊二

脚本 / 岩井俊二

出演 / CHARA/伊藤歩/江口洋介/三上博史/渡部篤郎

音楽 / 小林武史

主題歌 / YEN TOWN BAND 「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」

上映時間 / 149分

 


あらすじ 

世界で“円”が最も強かった頃という、架空の時代を辿った世界観において、一攫千金を狙った移民たちで溢れる“円都(イェンタウン)”と呼ばれる街があった。

日本人たちは棲みついた異邦人たちを“円盗(イェンタウン)”と呼び蔑んだ。

そんな、イェンタウンに棲む、イェンタウン達の物語。

 

 

 

感想

20年前の作品だが、今観ても古臭さや時代遅れのようには感じない。それどころか冒頭から映画の世界観と織り成す雰囲気に引き込まれた。

ノスタルジーで退廃的、アンダーグラウンドなイェンタウンの雰囲気や日本語、中国語、英語の3ヶ国語を混ぜた特殊な会話などによって、不思議と登場する人々が皆リアルな異邦人であるかのように錯覚してしまう。

役者たちの中国語、英語が上手いのも一因だろう。外国人役者の日本語が流暢なのも雑多な、多国籍感ある空気を出すのに一役買っている。

 

 

私は映像技術についての知識がないが、映画の独特の空気感を生み出しているのは、カメラワークと音楽の組み合わせが大きな要因になっているように思える。

危ういシーンで突然に音楽が強く響いたり、そうかと思うと急に無音になったりと抑揚がある。場面の動き方と相まって、まるでPVを観ているような臨場感が出ており、気が付くと映画の世界に飲み込まれていた。

岩井俊二の作品は、映像美が特徴的だという話をよく聞くが、その通りだと思う。

 

これらのことから、雰囲気映画と言われることも多いようだが、この映画の魅力は他にもある。例えば、登場人物の魅力も注目点である。

 

伊藤歩(アゲハ役)は幼いながらも色気があり、美しさや儚さ、危うさといった不安定さが醸し出ている。

CHARA(グリコ役)は一本心が通った強さがあるが切なさも滲み出ており、思わず惚れそうになる。ていうか単純に可愛い。好きになる。

どこまでも真っ直ぐな三上博史(フェイホン役)の格好良さ。

狂人のような面と面倒見のよい優しい面の両方を持った江口洋介(リョウ・リャンキ役)。魅力を挙げるときりがない。

そんな彼らが、ストーリーに合わせて物語が出来たのではなく、登場人物たちが勝手に動いてストーリーが生まれたようにすら思える。

 

挿入歌も良い。グリコ演じるCHARAの歌声は思わず聞き惚れる。

映画内でCHARAが活躍する架空のバンド「YEN TOWN BAND」は、主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」で実際にデビューし、当時のオリコンシングルチャートで1位を獲得して話題となったようだ。

 

また、トランプ大統領の政策によって移民問題が取りざたされることの多い昨今において、移民を受け入れない日本が制作した移民問題を扱った映画というだけでも観る価値があるだろう。

 

 

無慈悲で救いのなく、登場人物たちが時に虫けらのように扱われるシーンもあるが、彼らの活き活きとした姿勢からは、生きるということの美しさが切なく伝わって来て、未来への希望が奮い立ってくる。

 

鑑賞後に残る余韻が、寂しいようでいて心地よい、そんな映画だった。

私も彼らのように、苦しいときも明るく、力強く生きていきたい。

 

はじめまして

はじめまして。

管理人のマサカリです。

 

 

日々、積り積もる憂鬱に鬱憤。

これを発散させる為に、映画(主にアングラ系)を観るのが趣味になりました。

 

このブログでは、私が日々感じたモヤモヤを、ロックにバイオレンスに吹き消して解消してくれた映画の紹介、また感想を書いていこうと思います。

 

 

ブログ初心者ですが、どうぞ温かい目でよろしくお願い致します。