この世に蔓延る悪を殲滅しろ。それこそお前に与えられた使命だ。『 脳男 』
『 脳男 』
公開/ 2013年2月9日
監督/ 瀧本智行
脚本/ 真辺克彦、成島出
原作/ 首藤瓜於「脳男」
制作総指揮/ 城朋子
制作/ 藤本鈴子、由里敬三、藤島ジュリー景子、市川南、藤門浩之、伊藤和明、入江祥雄、
松田陽三、宮本直人
出演/ 生田斗真、松雪泰子、二階堂ふみ、太田莉菜、江口洋介、染谷将太
音楽/ 今堀恒雄、ガブリエル・ロベルト、suble
主題歌/ キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」
撮影/ 栗田豊通
編集/ 高橋信之
上映時間/ 125分
▶概要
生田斗真主演のサスペンス映画。原作の「脳男」(著:首藤瓜於)は第46回江戸川乱歩賞の受賞作品である。また、第2作目の続編「指し手の顔 脳男2(上)(下)」は乱歩賞史上に残る問題作との評価がある。
▶あらすじ
刑事・茶屋(江口洋介)は連続爆破事件の犯人・緑川(二階堂ふみ)を追い詰めるが、確保できたのは、その場にいた身元不明の青年・鈴木一郎(生田斗真)だけだった。
鈴木は精神鑑定に回され、精神鑑定医・鷲谷真梨子(松雪泰子)により検査を受ける。結果、彼は並外れた知能と肉体を持つが、感情がなく痛みも感じない人物であった。
悲しい宿命を受けた“脳男”を巡る、バイオレンスミステリー。
(観る人の感性によって感想は異なる為、ご注意下さい。)
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▶感想
映画の見初めで、まず生田斗真(鈴木一郎役)の演技力に驚いた。
感情のない表情や機械の音声のような話し方は、彼の端正な顔立ちと相まって、まるで人間に限りなく近いロボットに見えてくる。
そんな、ずっと見ていると不安になってくる不気味さは“脳男・鈴木一郎”の漫画のダークヒーローのような、現実味のない生い立ちにリアリティを与えている。映画のラストで彼が見せる表情の変化には、思わず鳥肌が立つ。
生田斗真の役者としての力はこれ程だったのかと、感動せざるを得なかった。
(イケパラとかの、ギャグキャラのイメージがあったのに…)
また、生田斗真を付け狙う二階堂ふみ(緑川紀子役)の存在にも注目したい。
この役は、原作では高い頭脳を持つ中年男性の緑川紀尚が当てはまるが、映画では設定を変えている。
私は小説の方は未読であるので、元の緑川の魅力については分からないが、映画としての脳男においては二階堂ふみの抜擢は素晴らしいと感じた。
高い頭脳を持つ、サイコパスの爆弾魔というこれまた漫画のような設定だが、二階堂ふみの演技と“鈴木一郎と対照的な犯罪者”という構造により、こちらも映画を面白くする重要な要素のひとつになっている。
特に彼女のギラギラした目は妖しい光を放っており、ひと目で異常性が伝わってくる程である。(彼女の、舞台挨拶やバラエティ番組で見せる柔らかい表情を見ると何故か安心するくらいに演技がキマッている。)
また、鈴木一郎に人間味がない分、緑川を含めて他の登場人物は感情的で人間臭くなっているのも面白いところである。
激情型の刑事、悲しい過去に囚われた精神科医、サイコパスの爆弾魔と彼女を神のように崇める部下…
このように、主要な登場人物は物語のキャラクターらしく個性的に描かれている。
しかし、
犯罪、命の価値、被害者遺族の感情、加害者の人格と更生の可否…
社会的に取り上げられる、重く難しい問題にいくつか触れているため、単なるエンターテイメントではなくシリアスな要素も含み、物語に全体的な締まりがある。
特に物語を構成する上で、染谷将太(志村役)の役割は重要である。
個性的な人物が多い中で彼のプロフィールは少なく、他のキャラクターを掘り下げる装置のような意味を持っている。
しかしその分、逆に生々しい存在感があり、現実じみた絶望感を最後に与えた。
グロテスクでバイオレンス、情け容赦のない悲劇が連続する映画だが、完成した物語や役者さん達の演技が光った面白い映画だと思う。
まだ観ていない方で、もし興味を持って頂ければ是非観てもらいたい。