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Money Theater

アングラ映画の紹介・解説と日常の憂鬱

『闇金ウシジマくんTHE・FINAL』 社会問題Pickup

現実にある、社会問題や犯罪をリアルに描写した「闇金ウシジマくん」。

本作でも、社会の闇を体現したようなキャラクター達が登場し、ウシジマとしのぎを削り合う。

 

今回は、そんな社会の闇からの “刺客”達をもとに、現代日本の問題に照らし合わせて、紹介・解説していく。

 

 

 

 

 

“刺客”から見る現代社会の闇

 

①誠愛の家 貧困ビジネスの巣窟 ~

【 劇中 】

「敷金礼金なしで、1日900円で住める場所があるよ。」

「仕事も斡旋するよ!」

鰐戸三兄弟が経営する低額宿泊施設“誠愛の家(ラブハウス)”は、そんな甘い誘惑で社会的弱者を集める、所謂「貧困ビジネス」である。

「こんな所で寝ていたら凍え死んじゃうよ!あったかい布団で寝られるよ!」

経済的に困窮した者からすると、とても魅惑的な謳い文句だろう。だが、連れて来られた人達には、悪夢のような凄惨な日々が待っていた。

 

貧困ビジネスとは?

貧困ビジネスとは、経済的に困窮した社会的弱者をターゲットに利益を生み出すビジネスモデルで、ホームレス支援や貧困問題に取り組むNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』事務局長、湯浅誠によって提唱された言葉である。

例としては、「無料低額宿泊所」、「労働者派遣」、「ゼロゼロ物件」、一部の「ネットカフェ」、「消費者金融及び闇金融」などが挙げられる。

その殆どにおいて言える事だが、顧客である貧困層の救済という社会貢献を掲げながらも結局は貧困を固定化し、利益をとる企業側のみに都合の良いビジネスモデルが整備されている。

 

“誠愛の家(ラブハウス)”は、ゼロゼロ物件、タコ部屋労働、ギャンブル、風俗など、あらゆる貧困ビジネスの要素を詰め込んで入居者を搾取していた。

下記では、その一部について詳細を解説する。

 

 

 

ゼロゼロ物件

路上で震えながら朝を待つ竹本を見つけた鰐戸三兄弟の次男・次郎(YOUNG DAIS)は、「敷金礼金なしで住める低額物件」として“誠愛の家”を紹介し、場所まで案内する。

しかし、施設に着いて突然「入居時に家賃数ヵ月分を一括請求する」と、次郎は新たな条件を持ち出してきた。

当然ホームレスの竹本には払えない値段になってしまい、結局は借金をして入居する事になる。

 

【 解説 】

次郎のセールスからはゼロゼロ物件を彷彿した。

このような物件は「敷金礼金なし」を宣言しながらも、実際には「入会金」、「仲介手数料」、「保証金」など、あらゆる名目で金銭を回収する為、単純な格安物件ではない。

また、“囲い屋”と呼ばれる悪質な無料低額宿泊施設の存在もある。入居者に生活保護を申請させ、長期に渡って生活保護費を掠め取る形態の貧困ビジネスである。

日本の公的賃貸住宅の数はヨーロッパに比べて少なく、一般の民間賃貸住宅の利用が難しい低所得の非正規労働者には厳しい環境である。

 

 

タコ部屋労働

入居した竹本は、六畳ほどの小汚い和室で他の入居者三名と共同生活する事になった。映画では描写されなかったが、原作は汚物が飛び散ったトイレなど、不衛生さの表現が強い。

無断外泊は認められないようで、殆ど軟禁状態である。また、各部屋の者同士で責任を連帯し、時にはお互いを見張り合う、江戸時代の「五人組」に似た制度が使われているようだ。

入居前の謳い文句にあった「仕事の斡旋」に関しては、低賃金のキツイ肉体労働が主であり、時には犯罪行為も強制された。食事は提供されるが非常に粗末なもので、消費期限が年単位で過ぎたレトルトのカレーとご飯を“冷やしカレー”と呼んで、温めもせずにそのまま出していた。

少しでも休んだ者、逃げようとした者は厳しく罰せられ、入居者達は凶暴な鰐戸三兄弟の三男・三蔵の虐待に怯えていた。

 

【 解説 】

主に戦前の北海道で行われてきた、非人道的な肉体労働が由来。労働者を“タコ”、監禁部屋を“タコ部屋”と呼ぶ。似たケースに九州の納屋制度がある。

暴力行為を伴った長期間の強制労働に加え、粗末な食事や不衛生な生活といった劣悪環境によって身体を壊す者も多く、理不尽に大勢の命が失われた。

さらに、逃げ出す者が出ないよう、捕えられた脱走者には見せしめとして容赦ない制裁が行われたという。

現代の日本では、労働基準法第5条「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」と定め、タコ部屋労働を禁止している。

しかし、現代でも非合法で行われているという話もあり、実態は定かではない。

 

 

 

 

 

②都陰法律事務所 ~ 詐欺的行為でカネを貪る悪徳弁護士 ~

 

【 劇中 】

“TVCMや中吊り広告を見ると、過払い請求を勧める法律事務所に溢れている”

映画冒頭で、カウカウファイナンスの債務者(六角精児)は、そのように愚痴っていた。本作では、そんな弁護士界隈からも“刺客”が参戦する。過払い請求を利用して大金を稼ぐ、都陰弁護士(八嶋智人)である。

彼の登場には、その道のプロの優秀さを実感させられる。実際ウシジマは、前半では都陰弁護士にやられ放題だった。

しかし、彼の経営する法律事務所は、相談者の無知に付け込んで様々な違法行為を行い、カネを貪っていた。

 

【 解説 】

田舎暮らしの為、中吊り広告にはピンと来ないが、一時期突然に増えた法律相談所のTVCMになら、私も違和感を覚えた記憶がある。

調べてみると、2006年から2010年にかけて、貸金業法という貸金市場のルールが大きく改正されたことが発端のようだ。

この法改正によってグレーゾーン金利が撤廃され、これまで正当な利息として合法化されてきた「みなし弁済」という利息制限法を超える金利が認められなくなった。つまり、過去に金融業者に支払ってきたグレーゾーン金利部分を取り戻せるようになったのだ。所謂「過払い請求」である。

過払い請求は債務者にとって救いのような話だが、弁護士にとっては比較簡単に稼げるビジネスである為、法律事務所が主体となって推し進め、一時期の過払い金ラッシュをつくった。これが街に溢れる法律事務所の広告の正体である。

最近では、「過払い請求」の単語を目にする機会は減ったように思えるが(都心部の事はよく知らないが)、今でも過払い請求は多く行われているようである。現在、業界全体の利息返還額は6兆円を超え、消費者金融市場は順調に縮小化している。

しかし、都陰弁護士の描写は、そんな流れを利用し、私腹を肥やすハイエナ弁護士の存在を暗示しているようだった。

また債務者(六角精児)はこんな事を語った。“消費者金融の審査が厳しくなって、合法的な場でカネを借りるのが難しい人が増える。闇金の復活だ”

気になって検索してみると、融資保証詐欺という、古いタイプを使う闇金業者が復活しているとの話があった。

どんなに光を当てても影が出来てしまうのは、世の習わしかも知れない。

 

 

 

 

 

まとめ

作中のような「貧困ビジネス」は、被害者の知識不足に付け込んだケースが多い。

こういった、“学校じゃ教えてくれない”社会知識は自分でしっかり調べ、正しい知識を持っておくべきだと改めて考えさせられる。